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“エンジニアリング”はエンジニアのための言葉じゃない。CTOが語る組織づくりとは

技術力はものづくりに関わる人たち全体を見ていかないと上がらない

VOYAGE GROUPには、7年間の運用・改善を繰り返して作られた「技術力評価会」というエンジニア評価制度があります。社外の方からも好評をいただきつつあるこちらの制度は、エンジニアの評価を正当に行い、成長に繋げていくために作られたもの。今回は、そんな「技術力評価会」制度を作った当社取締役CTOの小賀さんにインタビュー。エンジニアがハイパフォーマンスを出せる組織をどのようにして作っていったのか、エンジニア組織に対して感じていた課題から解決策、組織をつくる上で大事にしていることなど、気になるエンジニアの組織づくりについて聞いていきます。

小賀 昌法

Masanori Koga

取締役CTO

釧路工業高等専門学校卒業後、プログラマとしてNECネッツエスアイに入社。その後、いくつかの転職、自身での起業などを経て、2010年に日本最大級のSSPを運営する株式会社fluct(VOYAGE GROUPの100%子会社)に入社。その6ヶ月後にVOYAGE GROUPのCTOに就任。エンジニアの採用・育成・評価戦略における様々な仕掛けを構築・運用し、事業開発会社としてのエンジニア文化の醸成に大きく貢献。また、サービスインフラや社内インフラの構築・運用を手がけるシステム本部長や情報セキュリティ委員長も兼任。

ーーCTO就任当初、VOYAGE GROUP(※以降「VOYAGE」)のエンジニア組織に対して課題と感じる部分はありましたか?

小賀 : 当時、VOYAGEの組織構造が事業部制や子会社制へと切り替わってから3〜4年経ったタイミングでした。それまで「エンジニア」と呼ばれている人はシステム本部という部署に全員属しており、システム本部の本部長がマネジメントをしていました。ですが、各事業部や子会社に所属することによって、各部門のトップがエンジニアではない人になったんですよね。そういう点において、今までひとつの価値観で統一されていたものが、事業部や子会社の色によって色々な価値観が備わってきていて、技術において会社全体としての考え方や価値観がないな、と。エンジニアが確信を持った決断や挑戦ができなかったり、不安を感じたりするという状況があったので、どうにかしなければと思いました。また、組織構造の変化によって評価面でも、事業側から見た分かりやすい結果にフォーカスしていて、専門家にしか見えづらいところの評価の優先度がちょっと下がっているなという風に感じました。

ーー課題を踏まえ、CTOとしてどのようにエンジニアの方がハイパフォーマンスを出せる組織を作っていったのですか?

小賀 : 簡潔に言うと、現場のクルーに困っていることを聞いて、聞いたことに対して透明性をあげて進めていきました。CTOに就任した当初は毎週各部署のエンジニアを集めて共有mtgを実施し、議事録を全社に公開していました。最近ではslack(※1)でオープンに情報が流れているのでそれを見てコメントしたりしています。また、AJITOや行きつけの中華料理店で飲んでいる時にぽろっと課題や困っていることを聞くこともあるので、そこでクルーと話したことを社内のkibela(※2)にブログっぽく書いたりしています。

対話を重ね、透明性をあげながら任せていく

ーー透明性をあげていく上で工夫した点や気をつけていた点を教えてください。

小賀 : 工夫した点としてはもうどんどん「任せていく」ことですかね。基本的にはVOYAGEのクルーは非常に真面目で良い人が多いです。なので任せていくということを前提に、考えていることややっていることをちゃんと見せていって透明性をあげていく。そういう風に情報を適切に出して任せていけばうまく成果が出せるという風にやっていました。一方で、責任者としては「ここまではOKだけどこの先はNG」というリスクの線引は、気をつけていた部分ですね。

ーー透明性をあげることで悪い方向にいってしまうことはなかったですか?

小賀 : 最初はもしかしたら悪い方向にいくかもしれないと心配していました。ですが、透明性をあげて情報を公開しても、ひどいことにはならなかったんですよね。先程も出てきた評価制度の話になるのですが、「評価レポートを全員に公開する」ということを評価制度を始めて何年かしてからやったんですよ。そしたら、今まで見えていなかった他者の評価内容が見えることで、自分の評価に対する理解だったり納得感がみんな深まっていって。この時に、最初の心配は杞憂だったなあと思いましたし、透明性をあげてよかったなと感じましたね。

ーー評価される側の人から公開することに対して反対の声も出そうですが……。

小賀 : たしかに、評価レポートを公開した方がいいという意見が出てるんだけどどう思う?と個別に聞いていった時、何人かからは「心配です」という声があがりました。そうだよね、やっぱりそういう気持ちあるよね、と。ですが、疑問に思っていることだったり心配していることについて何度も対話を重ねていくうちに、その声はほとんどなくなっていって。じゃあもうそろそろ(評価レポートを公開しても)いいかもね、となって公開するまでに至りました。なので、対話を重ねていくことでちゃんと適切に理解してくれる、分からないことや気になったことは質問してくれる、そうした関係がベースにあれば情報公開に踏み切っても大丈夫というところですかね。

ーーエンジニア組織を作っていく中で、新たに見えた課題はありましたか?

小賀 : やはりテクノロジーの変化が激しいので、新しい技術が出てきた時に個人でキャッチアップするのもそうなのですが、組織としてその分野の技術力をどうやって上げていくのかみたいなところは、組織を作るだけではなくて組織・事業を成長させていく上で色々課題はあったかなあと思います。なのでそうした時には、若手に新しい技術にチャレンジしていってもらったり、内部の力だけでなく一部外部の方の力を借りるといったこともしていますね。たとえば評価制度(※)の中で外部の方も評価者として参加していただいたりとか。

CTOの繋がりで他社さんのCTOと話す機会があるのですが、自分たちの評価制度は本当に正しいのか、もっといいやり方があるのではないかと結構悩んでいる方も多くて。それならうちの評価制度を見てみないですか?と。彼らにとっても課題があり、うちにとってもメリットがある。このような外部の方を巻き込んでの取り組みを何回か繰り返しているのですが、1回だけでなく2回、3回参加してくれている人がいるというのは、お互い課題がありお互いメリットがあるという形が作れたからなのではないかと思います。

何をやりたくてどんな会社なのか?から理解

ーーどのような考え方をもってこれらのアクションを思考していったのでしょうか?

小賀 : そうですね。考え方としては、まずエンジニアだけをみるというわけではなく、VOYAGEは何をやりたいのか・どんな会社なのかを理解するところからスタートしました。ありがたいことにBOARDメンバー(※3)にも選んでいただいたので、3ヶ月に1回開かれる役員合宿などを通じて理解していきました。そこから、この会社にとってのエンジニア組織・エンジニア文化って何だろう、ということを考えていったのが最初のステップです。VOYAGEの経営理念にCREEDというものがあるのですが、そのCREEDを重視しながら、CREEDの上でちゃんと専門家がパフォーマンスを発揮できるようなものづくり文化にしていきたいと思ってやってきましたね。

ーーエンジニアの組織づくりを通してどのような結果が生まれていると思いますか?

小賀 : VOYAGEは元々メディア事業からスタートしているのですが、その当時作ったメディアを今まで長期に渡って支えてきた技術力は、まずひとつ結果からみて持てたのではと思います。今メディア事業で10年以上やっているメディアが4つとかあるんですよ。業界のテクノロジーの移り変わりが速い中、ちゃんと新しい技術を取り入れていかないと、古い技術だけではもう絶対に上手くいかないんです。新規事業の何もないところから新しい技術を使って作るよりも、古い技術を動かしながら新しい技術を取り入れていく方が難易度は高くて、それがちゃんとできているというのは、技術力のある組織づくりという面でしっかりできてきたと思います。もちろんこうしたメディアを支える技術力だけではなく、今VOYAGEの中で大きな事業として育っている広告プラットフォームでは大規模なトラフィックやデータを扱える技術力、インキュベーション事業(※)では新規事業を立ち上げる技術力、こういった力もしっかり備わってきているなと感じています。

コーポレートサイトにCTOメッセージとして書いているのですが、この業界はやはりテクノロジーの変化が速いので「急激な変化に適応できるチームであり続ける」というところを大方針として掲げています。これらの結果がもたらされた要因にはまずそこがすごく実現できているなと思っています。そしてそのためには「本質」が重要。「本質」を考えると、目の前の仕事をやるのではなく、目の前の仕事を通じて本質を理解するんだというメッセージを打ち出してきたところや、はやく挑戦してはやく失敗し、そこから学んでいくんだ、というこの2つがしっかり根付いていると思います。

職種関係なく全員でエンジニアリングを

ーー小賀さんにとっての「組織のあるべき姿」とは何か、教えてください。

小賀 : あるべき姿と言われるとなかなか難しいですが、組織全体で考えていくことは重要だと思います。たとえば、CTOになると、テクノロジーの責任者なのでテクノロジー領域だけをみるという風に考えてしまう人もいると思っていて。ですがそうではなく、組織全体をみてどうするのか。私が企業としての技術力をあげよう!と言った時にも、エンジニアだけをみていたら上がらないんですよね絶対。ものづくりに関わる人たち全体をみて技術力をあげていく風にしないといけないと思っています。

「エンジニアリング」という言葉は、エンジニアという職種の名前がついてしまっているからエンジニアだけのもののように聞こえるのですが、ちゃんとその背景を理解し、仮説を立てて検証し、その情報からまた仮説を立てて検証していく。こういうことがエンジニアリングだと思います。なのでそういう意味では、全ての職種、全員でエンジニアリングしていくということだと思うんですよね。そのためには前提としてお互いリスペクトも重要ですし、信頼していて素直に言い合えるような仲間というところがすごく重要だなと思っています。そういうことができると本当に技術力が高く、良い価値を世の中に生み出せる会社になるのではないでしょうか。

※1:社内で使用しているチャットツール
※2:社内での連絡事項や社員の日報等が見れる共有ツール
※3:VOYAGE GROUPの役員

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